はじめに

この度はSTD-42 Decoderに興味をお持ちいただきありがとうございます。
STD-42 Decoderは、ARIB STD-42 POCSAG方式のデジタル同報系 防災行政無線の受信・測定ができるソフトウェアです。ソフトウェアはオーディオインターフェイスを介してFM復調信号を入力することで動作し、文字データ伝送時はその内容が表示されます。

本ソフトウェアの利用には基本的なコンピュータ操作や無線通信に関して一定の知識が必要となります。また、商品の性質上、返品・交換・キャンセルはお受けできませんので、ご購入前に 動作確認用ソフトウェア を利用し、動作環境に問題がないかあらかじめ確認を行うことを推奨します。

本ソフトウェアの機能

ソフトウェア利用上の注意事項
  • 本ソフトウェアは戸別受信機の代替となるものではありません。受信により得られた情報は参考程度に留めてください。
  • 命に関わるような防災用途での利用は推奨しておりません。防災用途で必要な場合は自治体を通して戸別受信機の入手を推奨します。
  • 受信により得られた内容は電波法による保護対象となる可能性があります。ソフトウェアで表示・記録されるデータは、個人の責任で取り扱ってください。

想定利用シーン

推奨動作環境

動作確認ソフトウェア

動作確認ソフトウェアはライセンス不要で実行することができ、以下リンクからダウンロードすることができます。
動作確認ソフトウェアは、受信文字データの表示文字数や外部出力機能が制限されています。ライセンスファイルの配置を除き、導入方法は製品版の手順と同一です。 受信文字データが表示されたり、受信状況を示すアイパターンのアイが開いてる、品質メータが良好であれば受信可能であると判断することができます。
ご購入の前には、お住いの地域で防災行政用途の送信が実際に行われているか、動作確認ソフトウェアを数日間使用して確認されることを推奨します。

動作確認ソフトウェア std_42_decoder_evaluation_v1.0.0.0.zip (2,219 KB)

システム構成と導入方法

システム構成例

STD-42 Decoderは、オーディオインターフェイスに入力されたFM復調信号からデジタル信号の復調処理を行い、文字データ伝送時は内容のデコードを行います。
FM復調信号は、 RTL-SDRAirspy Mini に代表されるUSBドングル型のRFフロントエンドとデバイス制御・選局ソフトウェアの SDRSharpSDR++ 等のソフトウェアを組み合わせて取得したり、無線機(受信機)のFM復調出力を利用することができます。受信構成例を以下に示します。

導入手順

SDRSharpを利用してSTD-42 Decoderを利用する手順は以下の通りです。無線機のFM復調出力を利用する場合は、コンピュータのLINE入力端子と無線機のオーディオ出力端子を接続後、ステップ3でオーディオ入力設定を行って下さい。

オーディオデバイスの準備
仮想オーディオケーブルのインストールを行います。
SDRSharpの導入・RFフロントエンドの接続
SDRSharpのインストールとRFフロントエンドの導入を行います。
STD-42 Decoderの導入
ソフトウェアのダウンロード、ライセンスファイルの配置、入力デバイス設定を行います。

ステップ1. オーディオデバイスの準備

SDRSharpからSTD-42 DecoderにFM復調信号を伝送するにはオーディオインターフェイスを使用します。以下では、仮想オーディオケーブルを使用する構成について説明します。仮想オーディオケーブルを利用すると、コンピュータOS内部で仮想的にオーディオデバイスを作成・接続することができ、 物理的な配線が不要になります。既に仮想オーディオケーブルを使用している場合、ステップ1はスキップ可能です。
代表的な仮想オーディオケーブルには以下のようなソフトウェアがあります。 インストール方法は各サイトを参照してください。作成したオーディオインターフェイスは、手順2でデバイス名の指定を行います。

仮想オーディオケーブルインストール時の注意点
  • 仮想オーディオケーブルのインストールを行う際は、右クリックメニューを開き、管理者として実行してください。インストール完了後はインストーラの案内に従い、OS の再起動を行ってください。
  • Windowsの仕様により、最後にインストールされたオーディオデバイスが既定のオーディオデバイスに設定されます。スピーカーから音が出なくなったときなどは、サウンド設定から既定のオーディオデバイスを再度選択してください。 規定のオーディオデバイス変更は、本ソフトウェア及びSDRSharpを起動していないときに実施してください。

ステップ2. SDRSharp の導入、RFフロントエンドの接続

SDRSharp の導入方法は様々な書籍やWebサイト、YouTube動画で解説が行われておりますのでそちらを参照してください。以下は、RFフロントエンドとSDRSharpの初期導入が完了している状態での説明となります。
SDRSharpを起動し、280MHz帯に周波数を合わせ、所望の周波数にチューニングします。

受信レベルに関して
  • 複数送信基地から電波が届いていたり、マルチパスの影響によりSNRが高くても正常に受信できない場合があります。その場合は、指向性のある八木アンテナを使用したり、アンテナ位置を変更するなど受信状況を変えてみてください。

2.1 出力オーディオデバイスの指定

SDRSharpのOutput デバイスを選択します。Outputデバイスの変更は停止状態でないとできませんので、受信状態になっている場合は、 アイコンを押して、受信を停止させます。 ここで選択したデバイスは、手順3でのSTD-42 Decoderの入力デバイスと一致させる必要があります。

出力オーディオデバイスの指定が終わったら、 アイコンを押して受信を開始します。以下の図は、Line 1 (Virtual Audio Cable)を選択している状況です。 デバイス名の先頭に [MME][Windows DirectSound]が付いている2種類ありますが、デバイス名があっていればどちらでも構いません。手順 2.2に進みます。
※ Unity Gainは無効化してください。

2.2 受信モード設定

FM復調信号を出力するために受信モードを指定します。NFMモードを選択し、Bandwidthを15kHz前後に合わせ、Orderを100-300程度に設定します。
Orderはフィルタの次数を表しており、大きい値ほどBandwidth外の領域の減衰が大きくなります。 近い周波数に別の波やノイズがある場合は、隣接波の影響を防ぐためにOrder値を大きめにすることを推奨します。

ボリュームアイコンがミュートになっている場合は、アイコンをクリックし 状態となるように変更します。以下の図は、ミュートが解除されている時の図です。

SDRSharp 設定時の Tips
  • IF Noise Blanker等のイコライザプラグインやAGC機能はすべて無効化してください。イコライザはデジタル信号の復調処理に悪影響を及ぼす可能性があり、受信不能になる恐れがあります。
  • 1つのオーディオデバイスに対して、複数のSDRSharpからオーディオ出力を行わないでください。混信により復調できなくなります。
  • RTL-SDRドングルを利用している時は、Offset Tuning 有効にすると中心周波数における直流 (DC) スパイクを回避することができます。
  • 急なレベル変動を避けるため、RTL ACGTunner AGCは無効にし、手動でRF Gainを設定することを推奨します。また、サンプリングレートを小さくするとPCの負荷が減少し、安定性が向上します。

ステップ3. STD-42 Decoderのインストール

3.1 インストールと起動

ソフトウェアのインストールはダウンロードした圧縮ファイルを解凍し、解凍後のファイルをそのまま任意のフォルダへコピーした後、ライセンスファイルを配置することで完了します。手順は以下の通りです。

  1. ソフトウェア本体をダウンロードします。
  2. ダウンロードしたファイルを解凍します。
  3. 解凍したフォルダ内に、ライセンスファイル (license.jwt) を追加します。
  • ソフトウェア本体とライセンスファイルは、商品購入後の画面または、Sparkle マイページ内 ソフトウェア管理 から該当商品を開くことでダウンロードできます。
  • ウイルス対策ソフトウェアにより誤検知が発生した場合は、Sparkleよりダウンロードしたファイルであることを確認の上、除外設定を行ってください。 Microsoft SmartScreenにより起動が遮断された場合は、詳細情報をクリックし、実行 をクリックしてください。本ソフトウェアは Windows Defenderにより検査を行っています。
  • ライセンスファイルは1ヶ月の有効期限が定められており、期限内であればオフラインでも使用することができます。有効期限が近づくとインターネット経由で自動的にライセンス更新が行われます。 ライセンス切れ防止の為、少なくとも1ヶ月に1回はインターネットに繋がった状態でソフトウェアを起動してください。
  • 有効期限が切れている場合でも、有効期限から14日間は猶予期間としてソフトウェアの起動が可能です。猶予期間を超えた場合は、インターネットに接続可能な環境でソフトウェアを起動してください。

起動時は以下の必要ファイルが配置されていることを確認してください。フォルダ内のファイル名を変更した場合、ソフトウェアの起動ができなかったり機能の一部が使用できなくなる可能性がありますのでご注意ください。

それぞれのファイルの役割は以下の通りです。

ファイル名 目的
std_42_decoder.exe ソフトウェア本体です。
std_42_decoder_disp.ini 市区町村コードと市区町村名の対応が定義されています。
std_42_decoder.ini 設定ファイルです。存在しない場合はソフトウェア起動後に自動作成されます。
license.jwt ライセンスファイルです。利用者による配置が必要です。

3.2 起動

準備ができたら、std_42_decoder.exeをダブルクリックして起動します。
ライセンスファイルが存在しない場合は以下のエラー画面が出ます。有効なライセンスファイルを配置後、再度ソフトウェアを起動してください。

3.3 設定画面で入力デバイスを選択

設定画面を開き、入力デバイスを設定します。
入力デバイスは 手順 2.1 のSDRSharpで選択した出力デバイスと同じものを選択します。各画面の見方や設定項目の詳細については、画面構成を参照してください。

画面構成

本ソフトウェアは、メイン画面と設定画面の2画面から構成されています。

メイン画面 設定画面

メイン画面

メイン画面は以下のような画面となっております。

入力

入力オーディオデバイス名が表示されます。入力デバイスを変更するには、設定ボタンから行ってください。

設定ボタン

設定画面を開きます。

信号

入力信号の音量レベルが表示されます。

品質

デジタル信号の品質が表示されます。常時100%でない場合、情報の取りこぼしが発生する場合があります。

状態

信号の状態が表示されます。信号が正しく受信できると「空線」が表示されます。データ伝送中は「通信中」と表示されます。未受信時は空欄になります。

エンコード

文字エンコード方式が表示されます。空線時は「POCSAG」、日本語伝送中は「シフトJIS」と表示されます。

クリアボタン

ログエリアに表示されているログを消去します。

アイパターン

受信状況を示すアイパターンが表示されます。受信状態が良いと波形が揃っていますが、受信状況が悪くなるにつれて線がぐちゃぐちゃになっていきます。 アイパターン画面をクリックすることで、表示をオフにすることができます。
受信状態が良い 受信状態が悪い 入力なし    表示オフ   

ログエリア

受信した文字データ情報を表示します。メッセージの表示項目は、設定画面の表示フィルタ項目から変更することができます。
※表示される文字データは受信データをそのまま表示しております。1100や2200といった用途不明な数字が先頭部分に表示されたり、自治体によるフォーマットの違いにより表示フィルタが完全に動作しない場合があります。

設定画面

設定画面は以下のような画面構成になっています。設定内容は瞬時に反映されます。

信号入力

復調を行うための信号源となる入力オーディオデバイスを選択します。オーディオインターフェイスは、48kHz 16Bitステレオ入力に対応している必要があります。また、Windows側で本ソフトウェアに対してオーディオ機能利用権限が付与されている必要があります。
ノイズフィルターを有効にすると、入力信号に含まれるノイズ成分を低減する機能が有効化されます。

表示フィルタ

項目 説明
自治体指定 受信する自治体番号を指定すると、表示されるメッセージをフィルタリングできます。
自治体番号は、本チェックボックスを有効にする前に右側のテキストボックスエリアに入力してください。
自治体番号は e-Stat のページより検索するか、実際に受信することで確認することができます。
日時情報非表示 有効にすると、受信した日時情報を表示しません。
ヘッダ表示非表示 有効にすると、受信データのヘッダ情報を非表示にします。
制御文字消去 有効にすると、制御文字を消去します(読み仮名に関連したものは維持されます)。
読み仮名表示非表示 有効にすると、読み仮名を表示しません。※自治体により本機能は不完全な場合があります。

ファイル出力

項目 説明
生データ 受信した生データをファイルに記録します。
文字データ 受信した文字データをファイルに記録します。

HTTP出力

有効化にすると、受信文字データをHTTP(Method: POST Content-Type: application/x-www-form-urlencoded形式)で出力します。 エンドポイントはテキストボックスに入力します。各パラメータは以下の通りです。なお、実際のデータはURLエンコードが行われています。 メッセージには、読み仮名制御等のASCII制御文字が入るため、用途に合わせて整形してお使いください。 ※出力されるデータは不用意には公開せず、ご自身での利用に留めてください。

datetime=2025-02-15T12:34:56+09:00&
citycode=04999&
cityname=宮城県 ずんだ市&
message=1100\x17\x1C\x1D、試験放送\x1E\t2200\x17\x10こちらは、○○市です。テストを終了します。\x09

ライセンス情報

ライセンスされている使用者、ライセンスファイルの発行日と有効期限を表示します。有効期限が近づくと、ソフトウェアの起動時にライセンスファイルの自動更新が行われます。

起動時に更新確認

この機能を有効化すると、ソフトウェア起動時に更新有無を確認します。更新がある場合はダイアログが表示されます。

バージョン情報

バージョン情報を表示します。

設定を閉じる

設定画面を閉じます。

起動時に表示されるメッセージ

更新情報

インターネットに接続されている状態で 起動時更新確認 が有効の場合、ソフトウェア起動時にバージョン確認が行われます。 新しいバージョンがあるときは、以下のようなメッセージが出ます。
はい を押すとブラウザが開き、新しいバージョンのソフトウェアがダウンロードされます。ダウンロードされたファイルを解凍し、exeファイルを上書きしてください。
いいえ を押すとソフトウェアが起動します。
ソフトウェアのダウンロードURLはアカウントに対してユニークなものが発行されます。ダウンロードURLを他者と共有しないでください。 不正利用が確認された場合、アカウント停止措置が行われる可能性があります。

ライセンスの有効期限切れ

ライセンスの有効期限が切れた時は、以下のようなメッセージが表示されます。表示されているメッセージに従い、ライセンスファイルの自動更新または手動配置を行ってください。

ライセンス

FAQ

Q: MacやLinuxで動作しますか?
A: 動作しません。
Q: ライセンスが切れて起動しません。
A: インターネットに接続可能な環境でソフトウェアを起動してください。または、販売サイトからライセンスファイルをダウンロードし、手動で配置してください。
Q: アイパターン画面が動きません。
A: 次の4点を確認してください。
1. 本ソフトウェアの入力オーディオデバイスが正しいこと。
2. NFM モードで、ミュート状態でないこと。
3. Windows OS側で各ソフトウェアに対してオーディオ操作権限が付与されていること。
4. Windows のサウンド設定において、対象デバイスのゲインがミュート状態にされていないこと。
Q: 電界が十分なのにアイパターンが汚いです。
A: 次の3点を確認してください。
1. 複数基地の電波が届いていたり、マルチパス等の影響により受信状況が悪くなっている可能性があります。アンテナの位置を少し移動するなど、受信状況を変えてみてください。
2. SDRSharpのオーディオイコライザがすべて無効化されていること。
3. 1つのオーディオデバイスに対し、1つの出力のみ行われていること。
Q: アンインストールするにはどうすればいいですか?
A: フォルダごと消去してください。
Q: 多重起動はできますか?
A: 可能です。ただし、同一フォルダ内にある実行ファイルを多重起動した場合、最後に終了したソフトウェアの設定のみが保存されます。これは、設定ファイルは実行ファイルと同じフォルダ内に作成されるためです。 複数起動する際は、実行ファイルを別のフォルダにコピーした上で実行してください。なお、購入者自身での利用に限ります。

更新履歴

changelog.txt を参照。

リンク

注意事項